人外CP

ハーツェxサン

未着の頃、鬼

 久しぶりに公開制服着用の仕事だった。この制服は目立って嫌いだ。何時もの地味な、影のような目立たないスーツのような制服の方が好きだ。地味な制服は人数が少ない仕事が多く、この制服だと大人数の仕事が多い。とても多ければ端っこに居れば良いけれど、中途半端な人数だと周りの視線が辛かった。
 刀を腰に差して扉を出て鍵を閉めようとすると、白い指が扉に触れるのが視界に入った。
「ハーツ」
彼の気配の消し方は上手くて、普段はそんな事をしないのに時々こうして不意に現れる。
「久しぶりだね、その制服」
「……ああ」
何故だか優しい笑みの前ではこの服を着ていたくなかった。
「公開の仕事に出るって噂を聞いて、その制服姿を見たくて」
一瞬眼が合うが惨は俯いて逸らす。
「ザンは嫌いかもしれないけれど、ボクは似合っているとも思うよ。格好良い。滅多に見られないしね」
俯いた眼元に触れるだけのキスを落としてハーツェは微笑む。
「制服で綺麗な角が見られるのは、これくらいしかないしね」
ちゅ、と音を立てて帽子の脇から覗く左角にキスをすると惨はビクリと震えて顔を赤くした。
「だから、嫌いなんだ」
「知ってる。だから見に来たの」
頬を撫でるハーツェの手を振り払って惨は歩き始める。その背にハーツェは待って、と投げかけると惨は立ち止まった。
「怪我しないで帰ってきて。オレ、美味しいお茶を淹れて待ってるよ」
惨は少しそのまま立っていて、少しだけ振り向くと一瞬だけハーツェを見て言った。
「緑茶が良い……」
そして足早に立ち去る惨にハーツェは笑み、帰りにおいで、と言って背を向けた。