TheRose
ツウイン編/雰囲気モノ/R18
髪色
ったく、何で双子なんかね
ランお姉様…その言い方は… 折角の久しぶりの弟なんですから
煩いね、リーは ったく双子なんか泣き声も二倍、面倒くささ二乗
二乗は言い過ぎじゃないかしら
言い過ぎなもんか 足りないくらいだよ
それにしても、他の姉さんが居てくれたら二人の世話も楽でしたのに
どんな妹だって喜んでコイツ等の相手を押し付けてあげるよ こう云う時に限って居ないんだから
何時もは居らっしゃるのに…
あーもうっ 泣くんじゃないよ 今先に泣き出したのはどっちだい、リー?
えっと…左側に居るからインですわ
ったく完璧同じ顔しやがって 面倒なんだよ こんな事なら逃げとけば良かったよ
二人が話しながら、と云うよりもランが一方的に愚痴を言いながら双子の世話をしていた所に一人の男が現れた。
よー、どうだい? オレの弟は?
お前のだけじゃないよ アンタ暇なら世話しなさい
それよか、姐さんに来客さ
私に?
男、男
…ヤン兄さん……
余りにケタケタと笑う兄を嗜める。
何だい? 可愛い妹
余りあから様なのはどうかと思います
控えめに言い、泣いているインをあやす。
かかっ 可愛いね、リーは それよか姐さん、男は良いのかい?
ああもう、あんまりコイツ等が泣くもんだから忘れてたよ ヤンとリーだけでコイツ等の世話をするのも無理が在るしね、今日は追い返しておくさ 少し二人でどうにかしてなさい
そう言って、ランは部屋を出て行ってしまった。
姐さんもこう云う時だけ姉っぽくなるんだけどなあ おー泣け泣け
兄さん ちゃんとあやしてあげて下さい
上品な眉を寄せて兄を叱る。
おお、リーは可愛いねえ
顎に手をやるとくいっと上を向かせた。
兄さんっ
そんな事をしていると双子が一段と激しく泣き始める。
ったくこの弟達は喧しいなあ で、どっちがどっちだい?
…兄さん……
非難の眼を向けるがヤンはそんな事では気に留めない。
こっちがツウか? インか? 確かツウが兄だったよな?
えっと…………
ってか、珍しいよな、赤ん坊ん時からこの館に居る事になるなんてよ
こっちが、ツウかしら? でも……
どうやらリーに兄の言葉は届いていないようだった。そこへランが扉を乱暴に開け放ち戻ってくる。
ったく最近の男は粘っこいねえ
よう、姐さん、しつこかったのかい?
此処迄来たんだからとか何とかなかなか帰らないんだよ ったくしつこい男は嫌われるよ …リーどうしたんだい?
その……どちらがどちらか判らなくなってしまって……
今にも泣き出してしまいそうな声で姉へと寄る。
全く、これだから双子なんて嫌なんだよ
姐さん、家族じゃ未だ、双子は初めてだぜ
五月蝿いよ、お黙り
ヤンは肩を竦めて床に腰を下ろした。
じゃあ、こっちがツウ、で残りがイン ヤン、毛染め液をどっかから取ってきな
へ? 何、姐さん、髪染めんの?
コイツ等の髪だよ、馬鹿お言いでないよ さっさと探してきな
へいへい 全く姐さんは人使いが荒くて困るよ まあ、それが姐さんの良さでも在るんだけど
ヤン、さっさと行かないとアンタの毛を全部剃るよ
なっ 理不尽な…
アンタに理不尽なんて言葉を吐く権利は無いよ さっさとお行き
はあ、姐さん、酷いなあ 行ってくりゃあ良いんでしょ
そう背を丸めて急いで部屋を飛び出して行った。
姉さん、本当に……?
ああ、文句でも有るのかい?
こんな小さな子の髪を染めるなんて…
なんなら刺青でも良いんだけど
っつ それなら髪を染めるので良いわ
姐さんっ
大きな音を立てて扉を開けて入ってきたヤンがランに二つの小さな瓶を差し出す。
毛染め液なんて皆使わねえから、無かったよ
じゃあ、これは何なんだい?
ウィザー兄に急いで作ってもらったんさ こっちが蒼で、もう一つが銀だと これなら何度も染める必要なんか無いとさ
銀じゃなくて白だろう 染め直す必要が無いのは良いね
そうだろ?
じゃ、蒼をそっちで、そっちが白 蒼がツウだよ インは白だからね
わあお、解りやすーい
本当に楽しそうにヤンが笑って瓶の蓋を開ける。未だリーは思う所が在るらしく、どちらか判らなくなってしまった責任でも感じているのか、複雑な表情でそれを見ていた。瓶の中身をそれぞれ全て飲ませると、じわりじわりと根元から、髪の色が変わっていった。
これで見分けるのが楽になったね
泣いたままほったらかしにされている、蒼色の髪と白色の髪の双子を、ランとヤンだけが満足な顔で見ていた。