TheRose

ツウイン編/雰囲気モノ/R18

苦悲



ん…あっ
びくんとツウがインの下で跳ねる。
そして、ゆっくりと息を吐くとインにしがみ付いていた手を解いた。
イン?
何?
…………最近、また、あまり眠っていないでしょう?
そっと頬に指を滑らせ呟かれたその言葉にインは口を噤む。
ねえ、イン
……少しは寝てるよ
その応えに悲しそうに眉を寄せると首に手を回し、引き寄せた。
イン、僕だって、インの力になりたいよ
――っ  兄さんは居るだけで俺の力になってるよ
インだってそうだよ  だけどインはもっと力になってくれているじゃない
そう首に付けられたばかりの赤い傷に添えた手を近付けさせる。
でも、それは……
それは、何?  何か違うの?
はらりと透明な涙が頬を伝って流れ落ちる。
兄さん、泣かないでよ  兄さんが悪い訳じゃないのに
僕、僕…でも、何も出来てない、から
吃りながら、涙を拭い、留めなく溢れるのを抑えようと必死に擦る。
ごめん、兄さん、ごめん
両手でツウの顔を挟み込み、軽くキスを送って涙を舐め取った。
兄さん、あのね…  手を握っていて、俺が眠るまで
うん  眠っても握っているよ
そう微笑んで、手を重ねる。
一人じゃ、寂しいから
うん  一緒に眠ろう
ん…
暫くして安らかな吐息が二人の間から聞こえ始めた。