TheRose

ツウイン編/雰囲気モノ/R18

続ピアス

兄さん?
ノックと共に部屋に声が響いた。
居る?
そう言いながらインは部屋の奥まで勝手に進む。インが歩を進める度、手にした鎖がじゃらじゃらと音をたてた。
兄さん?
全ての部屋を見て回りながら進み、結局一番奥の寝室まで来てしまった。
兄さん…
インは兄の姿を見とめてくすっと笑う。
風邪ひいちゃうよ
ツウは本を広げたままベッドの上で眠っていた。
ベッドの横まで寄ってそっと兄の顔に掛かった髪を退けるように撫で、頬に軽いキスを送る。
仕様が無いなァ、兄さん
起さないように本を取ってしおりを挟みベッドサイドのテーブルに置く。そしてそっと薄い毛布を掛けてベッドの端に腰かけた。
ピアス穴、落ち着いてきたから次の開けて貰おうと思ったんだけどな
安らかな寝息を漏らすツウを眺めて、起きるのを待った。

ん…
ツウの長く不思議な蒼色をした睫が震えた。
あ、れ…?  僕、何時の間に…
眼元を擦りながら、手錠を嵌めた手で器用に起き上がる。
兄さん、起きた?
…イン……  あ、毛布、インが?
頷いて、未だ眠そうな兄に熱いキスをした。
ん…おはよ、イン
おはよ、兄さん
毛布、ありがとうね
ううん、放っておいたら風邪引いちまうだろ
くすりとツウが笑って軽い接吻を交わす。
僕、沢山眠っていた?
んー…俺が来た時はもう、寝てたけど
それからは?
そんな
即答したのを聞いて、ツウは良かった、と吐息を漏らす。
何で?
インを、待たせていないんだなって
そんな事気にしたの?  俺だったら何時まででも待つよ、兄さんの寝顔を見ながら
ちゃんと起きるって解ってるから、と続ける。だがツウは、それでもだよ、と笑った。
二人でじゃれ合いながら笑っていると、ふとツウが何かを思い出して手を止めた。
そうだ、イン、何か用事があって僕の所に来たんじゃないの?
あー…何かもう、どうでも良いや
何?
面倒そうに寝転んだインの顔を覗き込んで再び問う。
この前開けたピアス穴、落ち着いてきたから次ーって
…………聞かなければ良かったかな
そう、ぽつりと言い、ふいっと顔を逸らして背を向け座ってしまった。
するとインは声をあげて笑い、兄を振り向かせる。
ね、やっぱ開けて、兄さん  一つでも良いよ?

ねえ、兄さん?
…嫌
ちゅっと音を立てて耳に吸い付きピアスを舐めてインは喉の奥で笑う。
ね?
……どうしても?
うんっ
元気良く頷いたインに、大きく溜息を吐いてツウは向き直った。
インって意地悪
知ってるよ、兄さんもずうっと前から知ってるだろ?
…そう、だね
向き直ってもなかなか視線を合わせようとしない兄に口付け、舌を吸う。
…イ、ン……
ツウ、愛してるよ
名残惜しそうに離れてそっと告げる。
…僕もインの事愛してるよ
そう返されてインはくすりと笑った。
じゃあ、ほら、開けて
何処から取り出したのかピアッサーをツウの掌にのせる。
……やっぱり――
兄さん
手放そうとしたそれを包み込みじっと瞳を覗く。
開けて、くれないの?
――っ  …開ける、けど……
けど?
同じ声で繰り返して首を捻る。
インが、先に開けて…
縋り付くようなその声に優しく微笑み、ツウの手の中のピアッサーを取った。
俺が開けたら兄さん、絶対俺の開けなきゃならなくなるんだよ?
……僕からは無理
今にも泣き出してしまいそうな声にインは眼元にキスを送る。
解った  俺から開ける  でも、約束だからな
うん、開けた分だけ、ちゃんと開ける
初めて開けた時の約束を繰り返して指を絡めた。
頑張る、から…
再び俯いてしまった兄の額にキスを送って、邪魔な髪を退ける。
何処にする?
インの好きな所に
じゃ、此処
と、耳の上の方に当てて兄の顔を覗く。
良いよ
答えると同時に、インは握り締めた。
――ッ
握る時とは逆に、そっと離して眼をぎゅっと瞑った兄の頬を撫ぜる。
痛かった?
…この前の、より……
でもあんまり赤くなってないよ
きっと、軟骨が在るから…  ああ、イン、別の所で良いかな?
だーめっ
にっこり笑って兄にピアッサーを押し付ける。
兄さんと同じ所に開けるの  今回開けなかったら先送りになるだけだからな?
そう、耳を指して意地悪く笑うインに、整った眉を寄せてみせる。
そんな顔されたら余計虐めたくなっちゃうだろ
少し離れた所に居る兄を抱き寄せて膝に乗せる。
あー喰べたくなってきちまった
じゃあ――
駄目  先に開けるの
……
ほら、兄さん
ピアッサーを持っている手を自らの耳へと近づけた。
自分でやらなきゃ意味無いだろ?
そう、だけれど…
けど?
やっぱり無理だよ…  僕がインを傷付けるなんて……
それにこの前よりも痛いんだよ、と続ける。
じゃ、兄さんは約束破って開けてくれないんだ?
違っ
じゃあ、何?
……頑張る、よ…
うん、ありがとう、兄さん
ちゅっと眼の前の肌にキスして笑う。
ちょっ…手元狂っちゃう
慌てて身を引いた兄を再び引き寄せて謝った。
…もう、しない?
今は、な
くすっと笑って答え、早く、と催促する。
ツウは乗っている膝から降りて、足を跨ぐように立膝になって、白いインの髪を退ける。そっと、針の先を当てて問うた。
此処で、良いんだよね?
ああ
いくよ?

ツウは手に力を篭めようとするが、震えるばかりでなかなか出来ない。
兄さん?
…やっぱり僕には……
約束、しただろ?
うん…
そう説得されて再び場所を確認し、瞼を下ろす。
兄さん
ん…
足まで震えさせながらも、握った。
――ッ…
びくりと身体を震わせたが、インは直ぐに倒れかけた兄を抱き寄せる。
確かに、この前のより痛いな
苦笑して、酷い汗をかいている兄に口付ける。
兄さん、頑張ったね
…うん……
涙で濡れた顔をシーツで拭って、再び口付けた。
大丈夫?
…未だ、手が震えてる……
そうインの手を求めて、握り締める。
暫くそうして、荒くなっていた呼吸を徐々に落ち着かせた。
イン…ちゃんと、開けられた?
うん、場所もばっちり
良かった、と息を吐く兄に覆い被さって、唇を重ね舌を差し入れる。
ん…
何度も角度を変えて交わると、兄の服に手を掛け、真剣な顔になった。
兄さん、犯りたい
うん
犯らせて
今日は何だか真直ぐだね
くすりと笑って手を伸ばし、再びキスをする。
だな  何時もは犯るなんて言葉、使わねェもん
ちゅっと音を立てて頬を吸って赤い跡を残す。
犯るって言葉嫌いじゃないんだけどな
そう?
兄さんは嫌い?
うーん…別に嫌いじゃないかな  インに言われるなら良いよ
そう大人しく服を脱がされながらインを見上げる。
俺以外は?
…あんまり歓迎しないかな
苦笑して言うと、インは楽しそうに笑った。
でも、拒否はしないんでしょ
インだったら?
しないよ  でも、俺の一番はツウ  ってか、他に選択肢なんて無いし
じゃれ付くようなキスを何度も胸に落として言う。ツウはくすぐったそうに身を捩り、嬉しそうに笑った。
僕も同じだよ  イン、愛している
俺もツウの事愛してる、大好き