ShortStory

HYxKazuki/おじさんx青年

R18D-rail(HYxKazuki)

A-cross

新しい恋人が欲しくて、バーに居た。
ちびちび一人で酒飲んで、誰か声掛けてくれれば良いのに、と内心愚痴る。
オレなんかどうでもいい、要らないヤツだって言われてるみたいだ。
隣の空いていた席がやっと埋まる。
オレの甘いカクテルとは違って、琥珀色のウイスキー。
あ、手がオレ好み。
ごつい骨に程よく肉があって、滑らかで大きな手。時々ペンを持つ癖のある指。
ストライクゾーン、ド真中。
コップで手が遊んで、氷が高い音を響かせる。
手に見惚れて、飲む動きにつられ、うっかり見上げてしまった。
「なにか、気になる事でもありますか?」
「え、あ……いや」
やばい、顔もタイプだ。
年上で少し異国の匂いがしそうな深い目元。優しい瞳は精神的にも財布的にも余裕がありそう。
「フェチって程じゃないけど、アンタの手が好み過ぎて見惚れてた」
意外に男は迷惑がらずに笑って、少しお喋りしよう、と誘ってくれた。

少し細いが運動経験のありそうな腰に、薄いがメリハリのある尻。動けば綺麗に締まるだろう筋肉を想像すると、座っている現状が惜しまれる。
友人には若い男の尻を追い掛けて、と揶揄されるが年齢は関係無い。
ただ、程よく筋肉がついて薄く締まっている尻が好きなだけだ。
向こうは俺の財布で遊べる当たり障りない関係も、そろそろ面倒になってきた。
安定した生活に相手も憧れる年齢が多くなった事もある。
もっとあっさりした関係を最初から、と区切りのつもりで酒を飲みに出掛け、最高の尻に会った。
後ろ姿が少し寂しそうな、一人で酒を飲んでいる子に眼がいった。
背の高い椅子に座っていて、浅いズボンから覗く下着もおしゃれだ。
エロい腰。
バーの雰囲気にしては明るい髪で、若そうだと思いながら隣に座る。
待ち人が居るかもしれないし、いきなり視線を送って怪しまれないようにしないと。
取り敢えずのウイスキーを飲んで、眼が合った。
ドキドキ高鳴る心臓に静かにしろと念じながら、声を掛ける。
「なにか、気になる事でもありますか?」
「え、あ……いや」
黙っていれば紳士な外見をフルに活用した喋り方。
顔も好みだ。整っているが、可愛らしさよりはハキハキと明るく活発的。
「フェチって程じゃないけど、アンタの手が好み過ぎて見惚れてた」
笑顔に明るい太陽の下で走るイメージが湧く。
会話に誘うのは簡単だった。


「和樹、ゲームばっかしてないで」
「ゲームしながらでも、オレはひゅーの事考えてるよ」
新しいセフレ探しのつもりで、久しぶりに恋人に出会った。
最初は名乗らなかった。
和樹は普段から名前だけ本当に言うらしいが、俺は欠片も言わない。
ただ、和樹の時は特別にイニシャルだけ教えた。
「名前教えたのに、呼んでもくれないし」
「オレにとってひゅーはひゅーだし。後から、ほずみやまとって言われても、はあって感じ」
携帯ゲーム機をソファに放って跳ね起きる。
和樹のスポーツ経験は学生時代に数ヶ月のテニスだけ、珍しく予想が外れた。
「どっか出掛ける?運動系でもいいよ」
「じゃあ、壁打ちテニス」
「いいけど、ケツばっか見んなよ」
運動用のズボンは丈が短いのばかりだ。見るなと言われても難しい。
「魅力的だから仕方無いだろ」
適当に流して、和樹は置きっ放しの運動着を取りに行った。

最初のひゅーの丁寧な言葉遣いはむず痒かったのを覚えてる。
あっという間に無くなったけど。
何度かトモダチとして会って、その間もボディタッチするヒトなんだなあと思ってたけど、そうじゃなかった。
ヤツはオレのケツが目的だった。
それだけだと酷いヤツにしか思えないが、残念ながらオレはひゅーを好きになったし、ひゅーはオレが好きらしい。
「むっつりスケベめ」
「和樹はオープンだよな」
ひゅーがボクサーの方が好きらしいから、下着も変えた。
見えない普段はトランクス派だったけど、ボクサーに変えた。気紛れにローライズとか、少しスパッツみたいになってるのも履く。
その代わり、ひゅーは手のケアに時間を割いてくれてる。
前より爪の形は綺麗だし、ハンドクリームのお陰ですべすべ滑らかさが大幅アップ。
男らしくて滑らかな手はオレの理想だ。
ハンドル握ったり、料理したり、兎角、なにをしても良い手だ。
「えろいオレは嫌い?」
「大歓迎。でも今は」
「テニスだろ。筋肉痛になりたくないから適度にな」
「マッサージしてやるのに?」
ひゅーはスポーツが趣味一歩手前くらいに好き。好きになると、一度は凝る。
「えろい手付きでするから、ヤだ」
んべっと舌を出して、先に着替え終わったオレは荷物片手に更衣室を出た。

軽い動きに、きゅっと止まるメリハリのある動き。
普段運動しないくせに、和樹の身体はよく動く。
俺が買ってやった運動着は尻の谷間が服越しに見えて気に入っている。
中に入れれば良いのに出しっ放しのシャツは跳ねる度に舞い上がって、下着と腰をチラリと見せた。
シャツで汗を拭って晒される肌を眺めたら怒られた。
「見られたいから腹出したんじゃないのか?」
「へんたい!」
気持ち良い音を立てたボールの先へ動いて打ち返す。
経験の少ない和樹の反応は少し遅れるが、しなやかな速さで補う。
「やっぱり俺もストレッチしようかな」
和樹は風呂上がりや暇な時に習慣づけている。
意地悪なところに打てば、文句を言いながら走って、追い付けず悪態吐いて悔しがった。
わざと走り回らせるせいで、早くも息が上がった和樹に睨まれる。
「ケツ見ながら余裕ぶってんじゃねえぞ」
「少し休もうか?」
「もうちょっと!」
歳のわりには子供っぽい対抗心。嫌いじゃない。
END?

受:倉橋和樹(くらはしかずき)
攻:保泉大和(ほずみやまと)