TheRose

ツウイン編/雰囲気モノ/R18

遊び 01

兄さーん、居るゥ?
ノックも無しに、いきなり兄の部屋へと押し入った。それを嗜めずに、ツウは苦笑して扉へと向かう。
どうしたの、そんなに楽しそうな声を出して
現れた兄に軽い挨拶のキスを送り、背に隠していた紙袋を差し出す。
中、見ても良い?

じゃあ、何で出したの?
ちょっと兄さんを虐めたかったから
にっこりと笑って、最近無くなった兄の左の眼孔の周囲を撫でる。
くすぐったいよ
良いじゃん
そうじゃれ合っている間に、ふとツウが何かを思い出したらしく、インに腕を絡ませ寄り添った。
そうだ、忘れていたよ
何を?
スー兄さんが義眼の作り手を紹介しようかって
義眼?  見えるようになっちゃうのか?
んー…どうだろう?  そう云う訳じゃ、ないと思うけど  でも、今のままじゃあ瞬きすら不自由じゃない?
あァ、確かに  だけど折角だからなァ…
どうする?
兄さんは?
僕はインの言う通りにしたいな
すると、インがにっこりと笑う。
じゃァ兄さんが決めて
……イン…

ツウが抱き寄せたせいで、インの眼の前になったツウの耳を、インが軽く噛む。
俺の言う通りにしてくれるんだろ?
…仕方無いなあ、インは
大好きだよ、兄さん
じゃあ、このままが良いな
そう言ってくれると思ってた
耳からすっと目元へと舌を移動させ、眼孔の周りに接吻する。
折角僕の眼球がインに溶け込んでいるのに、僕に両眼在ったら変じゃない?
そうだね、兄さん
暫く、ツウはインに壁に押し付けられされるがままにしていたのだが、こっそりとツウが後ろに持っていた袋に手を伸ばした。
兄さん、バレてるよ
…インに隠し事は出来ないね
何時の間にか手首を掴まれ、壁に押し戻される。
ね、それ、何?
玩具
玩具?
うん  でも何だか未だ教えてあげない
僕に見せに来たのに?
うん
酷いなあ
酷いのが俺でしょ?
そうだね
二人でくすくすと笑いながら、キスを交わす。しかし、どうしてもツウの意識は紙袋へと向いてしまう。
…兄さん……
仕様が無いでしょう?  そんなに勿体ぶられては気になってしまうよ
そう、インを求めて悲しげに笑んだ。
そんな顔しないでよ、兄さん  止まらなくなる
それもそれで良いと思うよ  教えてくれないのなら忘れさせてよ
んー…それも嫌
意地悪だね、イン
そうだよ、俺は意地悪
そう接吻した歯の間から舌を差し入れる。
つっ
短い間で乱暴に口内を掻き回したかと思うと、唾液を絡ませつつ離して、にっこりと微笑んだ。
ね、兄さん、眼ェ瞑って
…ん……
息の荒いツウは素直に瞼を下ろす。それを何度も確かめると、インは紙袋から“玩具”を取り出し、ツウに付ける。
ね、何してるの?
未だ教えてあげない  ちゃんと眼ェ瞑っててよ?
それは守るよ
もうちょっとだからさ
そう、ツウの背でベルトを締めたかと思うと兄を前に向かせた。

んーっ  やっぱツウに似合うっ  最っ高!  自慢したいけど、勿体無いなァ
イン?
未だ駄ァ目  もうちょっと観賞してから
仕様が無いなあ
そう苦笑して大人しく立っているツウの背には、白い羽根。肩に通した革の紐が、後ろでベルトで繋がっていて、それに白い翼が付いている。
部屋、鏡張りにしてェ  兄さんを真中に立たせて、一日中見ていたいな  ァ、でもそこに俺居たら映るか  兎に角、飾っておきたいな
インが望むなら
じゃ、どっか空き部屋貰って、観賞用の部屋作ろっか
冗談交じりで言って笑う。
その前に、見ても良い?
仕様が無いなァ  兄さん、我慢出来ないの?
だって、さっきからイン、焦らし過ぎなんだもの
もー解ったよ  眼、開けて良いよ
付けられていた時の感触で解っていたのか、言われて直ぐに、瞼を上げて、首を回した。
……これは…?
兄さん知らないの?  羽根だよ、翼  天使の翼ってやつだね
それは解るけど…
じゃ、良いじゃん
暫く、自分の背から生えているような翼を見て、インの表情を見て、微笑みと共に溜息を吐き出した。
ね、イン、似合う?
似合うってもんじゃないよ  似合い過ぎ  似合い過ぎてヤバい  殺人的  もし兄さんがその玩具の見本として写真に出たら、誰も恥ずかしくて付けられなくなる位似合い過ぎ
本当?
本当だってっ  兄さんの不思議な色の髪と、白が物凄く綺麗なコントラストを生んでヤバいっ  本物みたいだもん
そう言うなら、付けてても良いかな…
でも、飛んでっちゃ嫌だよ、ツウ
大丈夫だよ、イン  僕は何処にも行かない  インが居る場所以外に僕の居場所は無いんだから
ツウ、愛してる
僕も愛してるよ、イン  ……ところで、これ、インの分は無いの?
へ?  俺の?
白だったら髪と一緒で、それも綺麗だろうけど、折角なら黒で、同じ羽根の玩具が欲しいな  明日にでも一緒に買いに行こうよ
驚いた顔をしていたインだったが、一緒に買い物、と聞いた瞬間に輝かせる。
一緒にお出かけ?
うん、そうなるね
じゃ、明日早起きしよォっと  楽しみだなァー
でも、この羽根は置いていくよ?
えェー
だって、唯でさえ人目を引くのに、これ以上引いてどうするの?
あァー…  俺の兄さんが取られるの嫌だしなァ…
僕はイン以外の誰のものでもないよ
でもなァ…  仕方無い  何時もの格好で行こう


ね、イン、僕、之が良いな
そう、昨日付けられていた羽根の色違いを指差す。
えェー  俺の趣味的にはこっちのが良い
そう、隣に置かれた蝙蝠の羽根を象った、所謂悪魔の羽根を指差す。
そっちもインに似合うと思うけど、お揃いが良いな
お揃いも惹かれるなァ
じゃあ、どっちも買っていこう  どうせ、兄さん達に沢山お金は貰っているし
俺だけ二つってのは嫌
イン、我侭
俺は我侭なの  も一つ何か、兄さん用に買っていこう?
良いけど…
さっき綺麗なロザリオ見付けたんだァ〜  よっし決まりっ
セヴィー兄さんは何も言わないと思うけど、色々言われると思うな…
気にしない気にしない


…やっぱり、これで出るのは恥ずかしいよ
扉の陰に隠れて、白い羽根とロザリオを付けたツウが廊下を覗いている。
どうして?  兄さん以外にそれ、そんなに似合う人間なんて居ないよ?  それに外ったって館の中じゃん
本当に不思議そうに首を傾げて、黒い羽根を付けたインが眉を寄せた。
イン…
それに俺だって付けてんじゃん、堕天使の方  兄さんが選んでくれた方だよ?
確かに、それはインに似合ってるよ  もう一つの悪魔の方だって素晴らしく似合ってた  インの銀髪と白肌によく映えて
でしょ?  それに、ヤン兄には金出してやったんだから買ってきた物は見せろって言われてるじゃん
そうだけど…
俺等働けないから仕方無いし、ね?
……解ったよ
そう溜息を吐いて、手錠を嵌めた手で扉を押し開ける。
ヤン兄、何処に居るかな?
部屋に居る事を願うな
未だ嫌そうな顔をしているツウにインは微笑んで軽いキスを送った。そして部屋の扉を閉め、兄の手を引いて、ヤンの部屋へと向かう道を辿る。
しかし、ヤンの部屋迄行く事無く、途中で出くわした。
あ、ヤン兄!  俺達今から行こうと思ってたんだっ
インが顔を輝かせて走り寄るが、ヤンは固まったまま動かなかった。
……やっぱり駄目だって…
ツウがぼそりと呟くがインの耳には届かない。
どう?  兄さん、似合いすぎでしょ?
お前等……それ、お前等だから許されるよな、その組み合わせ
似合う?
インが繰り返し問う。
あぁ、あぁ、似合うよ  その辺の奴等よりよっぽど似合う  っつかお前等の見たら遊びで使えねえじゃねーかよ、バカ
あははっ  やっぱりっ  似合うよね、兄さんのっ
……
ツウはインの陰に隠れたまま、口を開かない。
犯罪的だぞ、お前等
皆に見せるの勿体無いくらいね
そうだ、あいつに見せてやれよ、きっと喜ぶぜ?
…あいつ……?
初めてツウが口を開いた。
あー…お前等は知らないか  アルティの兄貴が帰ってきてんだけどな  アルティの兄貴とは会った事ねーよな
双子が同時に鏡の様に首を傾ける。
糞、マジ、お前等様になりすぎ  …アルティの兄貴は美術家なんだよ、自称  お前等が此処に来る前に館から修行するとかで出て行ったんだけどな、帰ってきてたぜ?  昨日挨拶に来たし  お前等ん事は知らなかったんだろうな  兄弟が増えるのなんて日常茶飯事だし
日常茶飯事って程でも無いけれど
何でそのアルティ兄の所行けって言うの?
だから、お前等片方ずつのしか見えてねーだろぉが  アルティの兄貴だったら二人一緒のを丁寧に表現してくれるだろうさ  頼めば写真だって絵だって気が向けばやってくれっぞ  万能だからなー  ま、気が向かないと何もしてくんねーけど
ふうん…
二人は余り興味が無さそうではあったが、アルティの居る所を訪ねた。
絵とか写真とか興味無いけど、新しい兄なら挨拶しなきゃなんないし
このまま行くのは嫌だけど、新しい兄さんが居るって知ったんだから直ぐ挨拶行くのが当たり前だよね
そう言ってヤンからアルティの部屋の場所を聞く。
オレも行くぞ  楽しそうだかんな
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